瑠璃の風
そこで気がついた。
僕は、いつもはここまでゆっくり歩いてくるのに、今日は走っている。
なんだか、落ち着かない。
ふと視線を上げると、宙にルリの姿が見えた気がした。
「ルリ……?」
だがそれは、絵の具が水に溶けるように風に溶けて消えてしまって、辺りにはあの甘く悲しい匂いだけが残った。
――この町で、すてきな名前が見つかるの?
――きっと……見つかるよ。
「ルリ……!」
わかった。
いつもと違うのは、僕だ――…。
僕はいつもの岩を通り過ぎた。
そのまま走り続ける。
慣れ親しんだ潮の香りが心地いい。
このまま走り続けよう。
どこまでも、この海を辿っていってみよう。