瑠璃の風

その朝日の中に、小さな影がひとつ。
栗色の髪のほっそりとした女の子が、波に奇妙な形に削られた岩に腰かけていた。

いつもは誰もいない朝の海岸。

僕は吸いよせられるように彼女のもとに近づいていった。


僕の気配に、彼女が振り向いた。

彼女の瞳は、深い深い青色だった。

その青を見た瞬間、僕は固まってしまった。

なんてきれいな色なんだろう。
でも、なんて悲しい色なんだろう。

そう思った。

沈黙が流れた。


と、彼女がふわりと笑った。

「なあに?」

――とくん。

僕の胸が大きく脈打つ。

その無邪気な微笑みは、瞳に映る悲しい色をいっそう引き立てるような気がした。

「あ、あのっ……。」

上手く口が動かず、どもってしまう。

「……へんなの。」

彼女は一瞬、不思議そうな顔で僕を見つめたが、すぐに笑顔に戻った。

「あ、もしかしてここってあなたの席?」

僕はこくりと首を縦に振った。


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