瑠璃の風

ルリは?

ルリはずっとここにいないの?

僕はそう聞きたかったけれど、答えは分かっていた。

その答えを聞きたくなかったから、聞かなかった。


「この町で、すてきな名前が見つかるの?」

ルリは笑った。

笑っているのに、その顔を見ると、僕は急に怖くなった。

「きっと……見つかるよ。」

「ふうん。」

嫌だ……。

そんな顔しないで。

嵐の海のように僕の心はごちゃごちゃに泡立っていった。

ルリが好き。
ルリが怖い。

どうしてこんな気持ちになるんだろう。


「僕……。」

「わたし、もう行くね。」

ルリが僕の指定席から飛び下りた。

甘い風が吹いた。
この町の風とはまるで違う。


待って。

僕はルリの背中に叫びたかった。
でも声がでない。

僕もふわりと岩から飛び下りる。

待って。

ルリが振りかえった。

ルリは笑って――いなかった。

「ばいばい。」

ルリがささやくようにいった。


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