瑠璃の風
そのとき、突風が吹いた。竜巻のようなものすごい風。
海も空も砂浜もそしてルリも、みんなごちゃ混ぜになったような気がした。
僕は立っているのがやっとだった。
風が弱まったところで目を開けると、海も空も砂浜もちゃんともとのままで、混ざってはいなかった。
ルリは、いなかった。
「ルリは風なんだね」
僕は呟いた。
ルリは風だから、走り続けなければならないんだ。
分かっていたけれど、すごく悲しい。
ルリは幸せだっていっていた。幸せだけど悲しいって。
ルリはどんな思いで走り続けているのかな。
ルリはどうしてあんなに悲しそうだったのかな。
ルリはどうしてあんな表情をしたのかな。
僕にはどれも分からない。
しばらくその場でつっ立っていたが、いいことを思いついた。
そうだ。
昼間をしよう。
潮の香りに揺られてうとうとしていると、頭の中のもやもやが少し晴れるのだ。
僕はいつものように、指定席でお昼寝をすることにした。
押し寄せては引いていく波の規則正しいリズムが眠りを誘う。
僕は薄れゆく意識の中で、空よりも海よりも、ルリの瞳が一番青かったなと思っていた。