恋。ときどき雨
☆シトラスの香り  智樹side
          ANOTHER



「じゃあ、また明日」



悲しい目をした玲奈と由姫が

自分の家に入る



「・・・先に、行ってるから」



千里も、帰った



俺たち2人・・・



「・・・・・・・・・美弥、」



・・・本当に、忘れたのか?



玲奈たちや千里のこと



両親のこと



・・・俺のこと



嘘だって笑ってくれよ



嫌なことがあるなら聞くし、



いつまでだって傍にいる



なのに・・・・・・



なんで、俺の声を聞いてくれない?



いつも、「ん?」

って、聞き返してくれただろ・・・



どんなに小さい声でも聞いてくれただろ



もう、聞き返してくれないのか?



「・・・美弥」



「・・・あ、なに?」



帰ろうとした美弥を引き留めて

自分の腕の中に閉じ込める



「・・・えっ、なに・・・!?」



バタバタと暴れる美弥を無視して

きつく、抱きしめる



「・・・・・・この香り、知ってる」



「・・・・・・香り?」



「シトラスの・・・・・・っう!!」



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