恋。ときどき雨



「幸福の祈り」



「うん。今の美弥に必要でしょ?」



「・・・私、持ってる」



そう言って、美術の鞄についている

黒い勾玉を見せてくれた



「これの意味は・・・?」



美弥と目を合わせて聞く



「・・・犠牲」



「えっ・・・?」



「いけにえ、身代わり」



どういうこと?



「・・・周りの人の代わりに

 全ての代わりを私が引き受ける」



いけにえ・・・



もしかして美弥は・・・

わかっててこの黒い勾玉を買ったの?



「・・・名前、書いてる」



美弥の勾玉には、名前が書いてあった



『ユメ  レナ』



『トモキ  チサト』



「この人たちの代わりが、私」



古い傷と

新しい傷



美弥はいつも、私たちのことを

思ってくれていた











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