私の媚薬


静かに扉を開けると、外の景色を眺める彼の後ろ姿が見える。

所謂、黄昏ていた。


「加賀くん?」

「ん?おーお疲れ……」

「何黄昏てんのよ」

「んー……小休止ってとこ」


爽やかな香りが微風に舞う。

隣に並んで同じ景色を見ているのに、私の全神経は彼の香りを感じて逃れられない。


「清水さんこそ黄昏に来たの?」

またふわり。

思わず振り向くと、彼の涼しげな瞳が私の瞳を捕らえていた。


「うん、まぁそんなとこ」


景色に目を戻しながら応える。


ふわり。

彼が身動ぐたびに、微風が通り抜けるたびに、
私の体は彼の香りに支配されていく。



気付くと、私は彼を見つめていた。

そしてその視線に応えるように見つめ返す彼の瞳。

その瞳に吸い込まれるように私は彼の腕に手を伸ばした。


次の瞬間。

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