激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集
「柏原、どうしたの? 恐い顔して。せっかくの美しい顔が台無しよ」
「……申し訳ございません」
「どうしたのよ! いつもは百倍返しで言い返してくるくせに! 変な執事! そうだ、お父様とアフターヌーンティを約束していたんだわ。柏原、ティールームに連れていって」
アフタヌーンティーは、茉莉果様と旦那様と奥様がそろわれた。飾り付けられたケーキにプディング、マカロンなどのスイーツを囲み三人は思い思いに紅茶を楽しむ。
「そうだわ。茉莉果、これエディンバラ城に匿われていたメアリーが愛用していたツボ押しですって」
奥様が甲高い声で楽しそうに話す。彼女は世界的なピアニストである以前に、世界に散らばる異物収集家でもある。
過去にも……あげればキリがないほどの異物を持ち帰って来ている。特に怪しげな露店商がお好きなようで、騙されては多額の金を出し満足している。
今回の異物は、木のボーリングのピンのような形をしたものだ。それを自身の手のひらにグリグリと押し付けて楽しんでいる。
メアリーとは、今から五百年以上前にこの地の女王。彼女がツボ押しマニアだったという情報はない。
「イタイ! 痛いわ! お母様~」
涙目になりながら、手のひらを擦るお嬢様。
「最初は痛いのよ! すぐに気持ちよくなるわ」
ツボ押しの怪しげな木を見せつけながら、ジリジリとお嬢様に近寄る奥様。その台詞、いつか俺が彼女に言ってやりたいな。
英国に来ようとも、バロックに囲まれたティーサロンにいようとも紫音家に代わり映えはない。いつもの調子で、わいわいと時が過ぎていく。
「奥様、アッサムティーがご用意できました」
「まぁ、ありがとう。お礼に……」
「けっこうです。奥様」