激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集
二十四時の鐘の後
────マーティン家の長い廊下は所々に生花が飾られている。
大階段には一際大きな花が豪勢にアレンジメントされていて、お嬢様はその一輪を勝手に千切って自分の髪に差した。
「可愛いでしょ?」
「ええ、とても……ですが飾られた生花を千切るのは不躾ですよ、お嬢様」
大階段をドレスを翻しゆっくりと上がる。
「うわぁっ!」
お嬢様の半歩後ろを歩いてた俺に、お嬢様が降ってきた。
また躓いたのか……カツンッ! と音を立てて、お嬢様が履いていたピンヒールの片方が落ちていく。
俺は彼女だけは落とすまいと必死に足を踏み込んだ。
「いかがなさいましたか? "ドジな"お嬢様」
「むっ……なによ! 今、ドジって言ったわね!」
恩知らずな彼女は俺の腕の内で暴れ出す。
「暴れられては困ります。世間知らずで無謀なプリンセス」
彼女の細い体を、抱えあげた。
「きゃあ、降ろしてよ!」
「無理だな、諦めろ。片方の靴を失ったシンデレラは、タチの悪い男に捕まりました……さあ、彼女の運命は?」
「冗談やめてよ、柏原!」