激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集


 今日は、やけに利口で大人しい。


 まぁ、こんな日も稀にあるんだろう。



「お嬢様、私は庭でレモンを採って参ります。他の事はなさらずに、そのままビスケットを砕いていてください」


「わかった」


 レアチーズは爽やかに仕上げるために、レモン果汁は必須。

 
 紫音家の庭では、先代が植えた柑橘類の果実やハーブなどを採取できるのだ。



 大人しく従うお嬢様を尻目に、庭へ急ぎ瑞々しいレモンをもいだ。良い香りを肺いっぱいに吸い込み、不思議な気持ちだった。


 今、たしかに俺はこの仕事に生き甲斐みたいなものを感じた。


 広大な庭に佇む、屋敷を見つめる。


 この静かな空間は、誰にも邪魔されず、干渉されず、彼女と二人きり……


< 14 / 161 >

この作品をシェア

pagetop