激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集
今日は、やけに利口で大人しい。
まぁ、こんな日も稀にあるんだろう。
「お嬢様、私は庭でレモンを採って参ります。他の事はなさらずに、そのままビスケットを砕いていてください」
「わかった」
レアチーズは爽やかに仕上げるために、レモン果汁は必須。
紫音家の庭では、先代が植えた柑橘類の果実やハーブなどを採取できるのだ。
大人しく従うお嬢様を尻目に、庭へ急ぎ瑞々しいレモンをもいだ。良い香りを肺いっぱいに吸い込み、不思議な気持ちだった。
今、たしかに俺はこの仕事に生き甲斐みたいなものを感じた。
広大な庭に佇む、屋敷を見つめる。
この静かな空間は、誰にも邪魔されず、干渉されず、彼女と二人きり……