激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集
「ちょっと柏原! そんなにあっさり終わらせないでよ! 私は、人魚姫が海で一目惚れするシーンが好きなの」
「海で一目惚れ? そのような事をお望みでしたら……」
俺は本棚から違う本を抜き取った。それを片手にお嬢様の隣に座る。
─────海原を、真っ黒な帆をはためかせた恐ろしい海賊船が堂々と進路をすすんでゆく。
その大きな船の甲板には捕えられたピーターパンとウェンディが後ろ手にキツく縛り上げられていた。
真っ黒なロングコートを着込んだ男が不敵に笑う。
「竜司……いや、ピーターパン。今日がお前の命日だ、目障りなお前がやっと海に沈む日がやってきた」
「くっ、使用人がフック船長とか似合いすぎて頭にくるけど……なんで僕らを捕えられたシーンから始まるんだよっ! 茉莉果ちゃん……じゃなかったウェンディの命だけは助けてくれっ!」
ピーターパンは悔しそうに歯を食い縛り、 甲板を見つめた。
「自分の命を犠牲にしても彼女の命を助けたいと?」
「当たり前だろっ! 好きな女の子を守るのが男の役目だ」
彼は、いつだって真っ直ぐに勝負を挑んでくる。