会いたくなったら、上を見上げて
「どうして私に何も話してくれないの? どうして私に何も話してくれなかったの? どうしてなの? ねぇ〜、どうして?」

「ごめんな志穂。いろいろ心配掛けて」

お父さんの声。
優しい声。
温もりと、安らぎの声だった。
私を抱きしめたままお父さんは

「けどね。お父さんにも、なかなか言いづらいことがあるんだよ」

「そんなの嘘よ。退院することくらい言ってくれてもいいじゃない」

「退院すること隠してた訳じゃないんだ。恥ずかしかったんだ。志穂にいろいろと迷惑掛けてしまったこと。不安にさしてしまったこと。謝らないといけないな」

お父さんの顔、見なくても分かる。
お父さん、泣いてるんだね。
声が少し震えてる。

「ごめんな。志穂」

何で? ……何で? ねぇ、何で?
何でお父さんが謝ったの?
何で私に謝ったのか、その時はよく理解できなかった。

「謝らないといけないのは私の方。お父さんごめんなさい」

「もういいから、志穂の顔を見せてくれ」

「ぶぐぐういい」

泣いてる顔、見せれない。
笑ってる顔、見せたいから。
だから、しがみついてる手が離れない。
笑おうと思っているのに。
笑おうと思ってるから。
目から涙が、止まらなく溢れてくる。
嬉しくて、涙が止まらない。
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