会いたくなったら、上を見上げて
「志穂? 起きたのか?」
振り向くとお父さんがいた。
手に缶ジュースを持っていた。

「志穂。オレンジジュース」

「ありがとう」

「よく眠れたか?」

「うん。ぐっすり」

私は大きくうなずき、オレンジジュースを飲み始めた。

「そうか。志穂、学校はどうだ? ちゃんと行ってるだろうな?」

「ちゃんと行ってるよ。失礼な」

「ははは。そうか。……ごめんな、大事な時期に」

「ううん。全然平気だよ」

「学校の話聞かせてくれよ」

お父さんの突然な言葉に、私はほんの少し戸惑った。

「なっ、何。急に」

「ちょっとくらい話してくれてもいいじゃないか。友達とかできた?」

「そりゃー一人や二人くらいは……」

「彼氏は?」

いきなりの展開に、飲んでいたジュースを噴きそうになった。

「なななっ。何? 何? 何急に!?」

言葉に詰まる。
動揺が隠しきれない。

「なっ、何でそんなこと……、聞くのよ」

「ふふふふ。あーはっはっはっは。さては彼氏がいるな?」

鋭い感覚。
にやけた顔。
いやらしい目。
そして不気味な笑い方。
キモい。
言い方が悪いかもしれないが、お父さんらしくなかった。
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