会いたくなったら、上を見上げて
「うわ!?」

急に私の体は引っ張られた。

“何? 誰? 私……やられる? 誰か? 誰か? ……誰か?”

「!? ……ぬわぁ……。健ちゃぶぐっ」

「し〜〜!」

彼は私の口をふさぐと、人差し指を口元に近づけた。
距離がものすごく近い。
彼に抱きつかれている。
いや、私が彼に抱きついてる。

「健ちゃん……?」

口をふさいでいた手をどけて、小声で話しかけた。

「どしたの?」

「いや〜担当の結城さんにイタズラしたら、えれー怒っちゃって逃走中」

「……何したの?」

「ナイショ♪」

健ちゃんが楽しんでるように見えた。
ううん。
見えたんじゃない。
楽しんでる。

「しばらく付き合って」

「うん」

私は軽くうなずいた。

「共犯」

健ちゃんが今。
笑いながら小声で、何か言ったような気がした。
でも、何言われてもいい。
今私は、健ちゃんに後ろから抱きしめられている。
このまま健ちゃんに抱きしめられていたい。
時間がこのまま止まればいいのに。
初めてこんな風に思った。
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