会いたくなったら、上を見上げて
健ちゃんの鼓動。
かすかに聞こえる。

“私の鼓動も、健ちゃんに聞こえてるのかな?”

かすかに思った。
胸がドキドキする。
あったかい。
健ちゃんの体。
あったかい。
このままだと、私……。
私、壊れちゃう。

“な、何か話とこ”

じゃないと私……。
ホントにおかしくなっちゃう。

「健ちゃん。さっきそこで何かの植物に手合わせてる人いたんだけど……」

「……あぁ。月下美人て花だよ」

「あっ! し、知ってる。夏に一晩だけ咲くやつ……」

「そう。けど、ここのって季節構いなしに咲く変わったやつでさ」

抱きしめられたまま話が進んでいく。
健ちゃんの息が……。
耳元で微かに感じる。
ドクン。
ドクン。
鼓動が高まっていく。

「その不思議さとか生命力とかでいろいろ言われてて。って、志穂聞いてる?」

「うん。大丈夫」

ホントに大丈夫かどうかは、解らない。
ドクンドクン。
ドクンドクン。
どんどん鼓動が高まっていく。
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