会いたくなったら、上を見上げて
「ここの月下美人が、満月に咲く晩は、奇跡が起きるとか、体が良くなるとか、願いが叶うとか……」

「っじゃあ、後でたくさんお願いしとくね。健ちゃんとお父さんとみんなが、早く良くなりますようにって」

「自分のは?」

「あっ? そっか。うん〜……。自分のはなんかいいや」

「どうして?」

「なんか、人のお願いのほうが叶う気するし」

「…………」

「わぁっ!?」

強く抱きしめられた。
健ちゃんは、何も言わずに私を強く抱いてくれた。
ぎゅーって。
ぎゅーってされた。
生まれて初めて。
ホントに、どうしたらいんだろう?
何か……。
何か話した方がいいのかな?
分からない。
どうしたらいいのか分からない。
もう私。
壊れてるのかもしれない。

「健、ちゃん……?」

少し照れながら、健ちゃんの名前を呼んでみた。

「あったかいな……。志穂」

「…………」

私は何も言えなかった。

「今日……夜デートしない?」

健ちゃんからのデートの誘い。
嬉しくてたまらない。
私は軽くうなずいた。
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