会いたくなったら、上を見上げて
扉の向こうは……
健ちゃんとのデート。
ただ……。
今の時間だと……。

“面会時間過ぎてるから見つからないようにしなければ”

心の中に言い聞かした。
健ちゃん。
健ちゃん。

“いた。健ちゃん”

健ちゃんは待合室に腰をおろしていた。

“健ちゃ〜ん”

軽いステップを踏みながら健ちゃんに近寄っていく。
ぞくっ!!
健ちゃんに近づいて、急に足が止まった。
胸騒ぎがした。

「健ちゃん? ……大丈夫?」

「おぉ志穂。うん大丈夫。夜はちょっと咳でるんだ」

ちょっとだけ、安心した。
月の光って、顔色悪く見せる……。

「じゃあ、行こ」

そう言って、健ちゃんは私に手を差し伸べてくれた。
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