会いたくなったら、上を見上げて
けど……。
違う。
なんか……。
なんかいつもと違う。
いつもの笑顔と……。
違う。
そう感じた。

「こほっ、こほっ」

また咳込んだ。
ホントに心配。
ホントに……。
ホントのホントに心配。
もしも健ちゃんに何かあったら。
もしも健ちゃんが倒れたら。
もしも健ちゃんが……。

「志穂!? どうしたの?」

「へ?」

「もう着くよ。俺のこと心配してくれてるのは、マジ嬉しいよ。でも……、せっかくのデートだから、志穂にもニッコリしてほしい」

そうだよね。
せっかく健ちゃんが誘ってくれたんだもんね。
私も笑って過ごしたい。
笑顔で過ごしたい。
ぼーっとしてたら、健ちゃんに申し訳ないもんね。

「うん。わかった。でもホントにダメだったら言ってね」

「ふふっ。ダメなもんか」
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