会いたくなったら、上を見上げて
……元気な健ちゃんと。
……元気な私の……。
二人だけの世界。
パラレルワールド。
虚像の世界。

「さぁ行くよ」

健ちゃんがドアノブに手をかける
扉の向こう。

「わぁ〜奇麗」

そこは、周り一面のお花畑。
気温が一定に保たれていて。
あったかい。
ぽかぽかする。
気持ちがいい。

「どうだ志穂。すごいだろ!?」

「素敵……。とっても……。とっても素敵」

こみ上げてくる思い。
なぜか……、涙が溢れてくる。

「泣くなよ。ホントに泣き虫だな」

「だって……。だって……」

泣いてる。
でも、拭うことなく立ち尽くす。
ただただ、目の前の景色を見つめる。
色とりどりの花。
赤や黄色、青に紫。
茶色に緑にオレンジ。
黄緑に水色と白。
それから、ピンク。
何て言えばいいのだろう?
芸術?
ぅん〜……なんか違う。
言葉で表せれない。
もう、すごくて、素敵で、幸せで、嬉しくて……。
こんな……。
こんな世界があったなんて。
「健ちゃん」

「ん?」

「ありがとう。こんな素敵な素敵な贈り物。嬉しいよ」
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