会いたくなったら、上を見上げて
 「さっきはありがとうございます」

 「でもよかったね。お父さん骨折だけで」

お父さんは、全治一か月の足の骨、骨折ですんだ。
お父さんが無事で、少し安心した。

 「私、前田志穂。今度高一です」

 「じゃ、十五歳?」

「いえ、十四です」

「そっか。俺、後藤健一。実は、十四歳まで生きられないはずだった十七歳」

「……え?」

「しぶとく生きてる、休学中の高校二年生さ。よろしく」

入院しているという彼は、そう言って笑った。
眩しいけど、月の光のような静かな笑顔だと思った。
不思議な。
不思議な笑顔だった。
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