会いたくなったら、上を見上げて
「志穂……。泣くなよ……。俺のことで泣かれると……、俺も困っちゃうんだよ」

「…………」

私は、何も言わず、スカートを強く強く握りしめた。

「…………」

健ちゃんも何も言わなかった。
そして……、私を、強く強く抱きしめた。

「泣くなよ志穂。笑って過ごそうって、約束したじゃないか」

「でも……、でも……グスン」

「ほら、元気出して。今日が最後じゃないんだから。俺、元気だから。だからまた……。また、次があるんだから」

「うん」

抱きしめたまま健ちゃんは話してくれた。
元気だということ。
次があるということ。
嬉しかった。
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