会いたくなったら、上を見上げて
「志穂。おまたせ」

私たちは病院内をぶらぶらと歩きだした。

「さっきのおじさん誰?」

「あぁー。リハビリしてるじーさん。たまに一局すんだけど、つえーつえー」

「でも、今日は勝ったんでしょ?」

「まぁー。じーさんが慣れない打ち方してきたからな。今のとこ六勝七敗。くやしー!」

「将棋してる健ちゃん初めて見た」

「俺、どうだった?」

「ぅん〜……。わかんない」

「何〜!」

「ごめんごめん」

健ちゃんの楽しそうな笑顔見てると、何だかこっちまで嬉しくなってくる。
心で想うだけで、口にだして言えなかった。
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