いきなり王子様
私と真珠は、同じような悩みを受け止めながら大人になって、要領よくそれを受け流す術を身に着けて今を生きている。
見た目の個性が自分の行動を制限させてしまう煩わしさは、私達には無言の理解。
二人にはわかる面倒くささだ。
「なあ、司は相変わらず真珠には手を出してないのか?」
「あ?ああ、うん。多分ね、見るからにその気いっぱいなのに彼女いるらしいし簡単には手を出せないみたいだけど」
ぼんやりしていた私に、甲野くんの言葉が響いた。
資料を片づけて、もう打ち合わせは終わりとばかりにあっさりというその言葉に意識を向けた。
甲野くんと司くん、仲が良かったっけ。
工場と本社だから、二人が一緒にいる機会は少ないはずだけどな。
「あいつ、いつまでいい人ぶってるんだよ。いい加減自分の気持ちに素直にならないと誰かに真珠かっさらわれるのに」
ぽつりと呟くと、小さくため息を吐く甲野くんは本気で呆れているような表情で天井を見上げた。
「惚れた女くらい、さっさとものにしろよな」
その言葉に、何だか違和感を感じた。
「ものにするって言っても、司くんには彼女いるじゃない。そっちをどうにかしなきゃ無理でしょ」
思わず口にした私に、小さな笑い声をあげた甲野くんは
「正論で何もかもが片付けば、恋愛なんて面白くもなんともない」
まるで私が何もわかっていないような呆れた声でそう言った。