いきなり王子様
そして、私を抱きしめて思いを注ぎ続ける竜也からの抱擁は。
「ギ、ギブ、だめ……もう、無理……」
5分ほど続いた後、息がうまくできない私の言葉によって終わった。
とはいっても、唇が解放されただけで、私の体は抱きしめられたままだ。
荒い呼吸を続ける私の様子に苦笑しながらも、竜也は満足げ。
こんな状況に慣れていない私と落ち着いている竜也の落差に、何だか悔しさも感じていた。
「俺のお姫様は、とことんかわいいな」
そんな、竜也の言葉は彼の口から出たとは思えない甘すぎる言葉が耳元に落とされて。
照れることも、反論することも何もできないまま、私は目を見開いてただ見つめ返していた。
「璃乃が起きてくる心配がなければ、ここで抱くんだけど」
……今まで私が知っていた竜也ではない竜也が目の前にいて、再び私は眩暈を感じて目を閉じた。
そして、どうにか呼吸を整えようと、何度か深呼吸をして。
「本当、もうギブだから、しばらく黙ってて。
私、慣れてないの、男の人からそんな溶けそうな甘い言葉、言われたことないから。呼吸障害起こしそう」
竜也の瞳を見る事もできず、照れくさい、そしてどうしていいのかわからない気持ちを隠せないまま、それだけをどうにか呟いた。
呟いた瞬間、私の体に回されていた竜也の腕の力が緩み、捕らわれていたに近かった私の心も動き始めたように感じる。