いきなり王子様


璃乃ちゃんの一年以上の闘病を支えているドクターは、そのあとすぐ私の担当医にもなった。

私が苦しんでいためまいは、検査を受けた結果、自律神経の乱れが原因らしく、おまけに肩こりもひどかったせいで、頻繁におきていたらしい。

けれど、数値的にはそれほど深刻なものではないという事で、軽いお薬を処方されて、様子を見ることになった。

肩こりを軽減するために、マッサージに通ったりウォーキングをしたり。

パソコンに向かう時間を減らそうともしたけれど、仕事ではパソコンは必須で。

それは諦めた。

定期的に診察に通い、時々璃乃ちゃんとも顔を合わせているうちに、その可愛さにやられた私は彼女に会う為に通院しているような気持ちになっていた。

璃乃ちゃんが大好きだというキャラクターのグッズをプレゼントしたり、診察の後璃乃ちゃんのお父さんも交えて一緒にケーキを食べに行ったりもした。

結局、璃乃ちゃんの手術は先送りとなり、これまで通り週一回の通院。

私は薬をやめても検査の数値が正常値を維持できるようになったおかげで通院も終わった。

ちょうど仕事も忙しくなっていたのも手伝って、病院でデートするかのような時を過ごしていた璃乃ちゃんとも会う機会が減って。

『璃乃、奈々ちゃんみたいに綺麗なお姉さんになれるように頑張るね』

病院の前で手を振ってくれた璃乃ちゃんを見たのが最後。

一年ほど前だったと思うけれど、病院に来る必要がないのは嬉しい事だとわかっている彼女は、私をお祝いしてくれるように明るくそう言ってくれた。

「……で、今日久しぶりに会って、大きくなった璃乃ちゃんにびっくりした」

璃乃ちゃんと知り合ったきっかけを竜也に話しながら、心の隅に忘れかけていた記憶を呼び戻して。

少し切ないその過去に、そっとため息をついた。

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