いきなり王子様

璃乃ちゃんの涙の原因は、自分自身が病気であることで家族に負担を強いていることへの申し訳なさだ。

まだ幼い璃乃ちゃんに、そんな感情を正確に分析するなんて無理だから、余計に璃乃ちゃんは戸惑い苦しんでいる、

自分が悩む具体的な理由を曖昧にしか認識できないんだから、つらいに決まっている。

これも、私が小さな頃に味わっていた感情だからよくわかる。

璃乃ちゃんの話をゆっくりと聞いて、整理していくと。

お母さんが璃乃ちゃんに対して持っている『ごめんね』の気持ちが見えてくる。

璃乃ちゃんの病気は、誰のせいでもないのに、お母さんは自分を責めている。

病気を抱えていない体で産んであげられなかった自分を責めるお母さんからの謝罪の言葉は、たとえ悪気がなくても璃乃ちゃんにとっては、自分を追い詰めるものでしかない。

子供にとっては一番の味方であり、自分を守ってくれる砦。

無条件の愛情を自分に注いでくれる絶対的な存在であるお母さん。

璃乃ちゃんにとっても絶対不可欠で優しいおかあちゃんのことを大好きだと、何度も呟いているけれど、その言葉に続いてこぼれるのは。

『おかあちゃん、いつも璃乃にごめんねって言うから、璃乃は、平気だよって笑ってるの。おかあちゃんは璃乃に優しくしてくれるし大好きなのに、謝ってばかりでかわいそうなの。それは、璃乃が病気だからなの』

自分の気持ちを整理しながらゆっくりと、子供なりに一生懸命紡ぐ言葉からは悲しみがありありと感じられてたまらなかった。

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