いきなり王子様
あまりにもはっきりと司くんと彼女の関係を断言した甲野くん。
彼と司くんとの繋がりは単なる同期程度のもので、さほどの親密さはないって思っていたけれど、こうもあっさりと言い切る様子からは同期以上の二人の関係がうかがえる。
「司くんと仲いいんだ」
甲野くんは、思わず小さく呟いた私の声に視線を上げると、どこか苦笑じみた顔で口元を歪めた。
「司とはかなり仲はいいけど、紹介してやるつもりもないから期待するな」
「は?紹介って何よ。別にそんなの頼むつもりもないし、同じ本社で働いてる同期だからもともと知り合いだもん」
「あ、そうだな。司の事を気に入ってる女がこの工場にも多くて紹介しろってうるさいから、ついお前もそうかと」
「お、お前って……あのねえ。確かに司くんが女の子に人気があるのも知ってるけど誰もが彼女になろうと狙ってるわけでもないんだからね」
ふん、と少し荒い呼吸のままで甲野くんに言い返すと、そんなの全くこたえてないようにあっさりと
「はいはい。ごめんごめん。俺が勘違いしただけだよな、悪かった」
目だけを私に向けて、体は既に会議室を出ようと動いている甲野くんに、瞬間いらっときた。
勤務地が違うせいで滅多に会う事もない大切な同期だというのに、どうしてこうも敵意すら感じられる口調でしか話してもらえないんだろう。
確かに、入社して以来会った回数なんて少ないし、共通の業務すらないとなればお互いの関係を深める機会はないに等しいけれど。
逆に言えば、お互いの印象を悪くする機会も少ないのに。
「私、今までに甲野くんに嫌われるような事、したことあったっけ?」
甲野くんの態度に嫌気がさした私は、それほど考える事もなく、思ったまま口にしていた。