いきなり王子様
「じゃ、どうして昨日、突然『遠距離恋愛できるか』なんて聞いたの?」
俺の膝の上で体を預けてくる天使。
気の強い、天使だけどな。
そんな奈々が今こうして俺との時間を過ごしている現実は嘘のようだけど、これはまさしく現実で、夢でもない。
「えっと……璃乃ちゃんと一緒にいるところを見たんだよね?病院で。
まあ、あの日声をかけてくれれば良かったのに」
少し拗ねたように、上目遣いで俺を責める奈々に、小さく笑ってその体を抱き寄せる。
見た目以上に華奢な体。
肩より少し長い髪を指先ですくい、ぱらぱらと落とす。
今では珍しい黒髪に輝く天使の輪。
艶やかなその手触りに、男としての欲が湧いてくるけれど、昨日今日で距離を近づけたばかり。
それに姉貴の家、そして、眠りの浅い璃乃がいつ起き出すかわからない状況に、どうにか気持ちを鎮めながら、それでもとりあえず、唇だけかすめるように。
お互いの熱を重ねた。