いきなり王子様
かなりの直球で俺自身の気持ちを吐き出すと、奈々にとってそれは体を強張らせるには十分な力があったのか、口をあわあわとさせながら
「そ、そうなんだ……で、でも、欲しいって、私はものじゃないし……」
焦って戸惑って、照れて瞬きを繰り返す。
それでも俺の膝から離れようとしない彼女の様子に、妙に安心した自分に気づいた。
昨日からかなり強引に奈々を連れまわして俺の気持ちを押し付けてきたということに気づかないふりでここまできたけれど、それでも心のどこかには不安があった。
「本当に、ずっと奈々が欲しかったんだ。それに気づいたのが、昨日。
でも、奈々が病院で笑っていたあの日からずっと、そんな思いにとらわれていたと思う。
そんな気持ちが強すぎて、遠距離でもなんでも、うまくやってみせるって思ってる。正直、奈々を俺のものにするためならなんでもできそうだ」
そう。
奈々とのこれからの時間が、遠距離恋愛という壁の向こう側のことだとしても、お互い、いい大人なんだ。
気持ちさえ向き合っていれば、どうにかなるはずだ。
「だから、俺と付き合って欲しい」
これだけ奈々を振り回しておいて、今更かよ、と自分でも呆れる気持ちもあるけれど、ちゃんと奈々を俺のものにしたくて、はっきりと言葉にした。
付き合って欲しいし、恋人として、これからを過ごしたい。
そんな俺の気持ちに驚いたように、一瞬震えた奈々の体。
それでも、今までよりもずっと密に俺に体を任せて、その両手を俺の首に回してきた彼女の体温を感じた時。
「は……やっとだ……」
やっと、ようやく。
恋しいと思っていた女が、俺のものになった瞬間。
思いがけず俺の口から出たのは、安堵からの言葉。
そして、自分でも緊張していたことに初めて気づかされた言葉。
「竜也……甘すぎる……」
相変わらず照れて俯く奈々を自分の胸に抱え込み、俺自身の顔も赤くなっていることを悟られないように、大きく息を吐いた。