いきなり王子様
恋人だけど

  *   *   *


『やっと』

やっと、自分のものにできた、と吐息交じりに囁いた竜也の言葉が体に染み渡り鼓動の跳ね方が尋常ではなくなってからしばらく。

しがみつくように彼の体を抱きしめながら、少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じていた。

竜也の胸に顔を抱きこまれているせいで、竜也の鼓動が徐々に穏やかなものに戻っていくのをずっと聞いていた。

竜也にとっても、私に対して気持ちを告げる事は容易いものなんかじゃなくて結構な緊張感を伴ったに違いんだと知れば、更に私の気持ちには欲が生まれてきて、竜也の心の移ろいを知りたいなと思ってしまう。

少し体をずらして視線を上に向けようとすると、途端にぐっと力が込められて

「見るな」

あっさりとかわされた。

「え?どうして?」

竜也の今の表情が見たかった。

ただそれだけで満足できそうなのに。

「竜也の今の顔、見ておきたいんだけど」

せっかく私に思いを告げてくれた、その瞬間の竜也の顔を見ておきたいだけなのに。

「見なくていいし、じっとしてろ」

相変わらず私を抱きしめるその力が緩む気配はなくて、無駄だろうと思いつつも彼の背中を軽く叩いてみた。

ずっと私を気に入ってくれていたという竜也が、意を決してと言えば大袈裟かもしれないけれど、ようやくの思いで私を欲しいと言ってくれた。

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