いきなり王子様
そして、思う存分ゲームを楽しんだ後、近くのファミレスに夕飯を食べに行こうという事になった。
璃久くんのサッカーの試合の後、チームのみんなと慰労会があるらしく、
『三人で好きなもの食べてね』
璃乃ちゃんのお母さんは、かなりの額の軍資金を竜也に渡していた。
この家の大きさから簡単に察する事はできるけれど、お金持ち。
きっとそうだろうと思って竜也にそう聞いてみると。
「義兄さんは会社の社長だ。まあ、儲かってるし仕事は忙しい。
姉さんとはお見合いで結婚したんだけど、今では砂を吐きそうなほどに甘い夫婦だから、お見合いもすてたもんじゃないって思う」
くくっと肩を揺らしながら笑う竜也は、からかい気味の口調だけれど、お姉さんの今の状況が嬉しいようで、その目はかなり温かい。
「そうなんだ。璃乃ちゃんのお父さんには病院で何度か会ったけど、若いよね。
それなのに社長さんってすごいね」
「ああ。早くにお父さんが亡くなって、大学生の頃には社長の椅子に座ってたらしいから。
ある意味自分の人生ではない人生を歩いてきてる人。
それでも、そのおかげで姉貴とお見合いして結婚できたんだから、そんな人生に感謝してるって真面目な顔で言うし。
璃乃と璃久にもめろめろで、結果オーライ。幸せな家族だよ」
「へえ。お金持ちだし家庭も平和。なんだか絵に描いたような幸せな家だね」
「ああ。姉貴も義兄さんの事を愛してるって平気で言うし、似たもの夫婦。
親に決められてすすめられた結婚でも、こんなに明るい未来があるなら、見合いも捨てたもんじゃないよな」
「親にすすめられた?」
ふと、竜也の言葉が気になった。