いきなり王子様
さらっと流すように呟かれた言葉だけど、私には何だか聞き流せないような、重い意味を含んでいるように聞こえた。
首を傾げる私に、一瞬焦ったような顔をした竜也は
「あ、そんな大した話じゃないから安心しろ」
私に笑顔を向けてくれた。
「生まれた時から会社の後継者として育てられた義兄さんは、結婚相手も両親が選んだ人だろうって覚悟してたんだ。
それなりに恋愛はしてたんだろうけど、本気にはならず、冷めた付き合い。
まあ、体だけ、みたいな」
「それって……」
「確かにまっとうな恋愛じゃないけどな」
全然まっとうじゃない。
体だけなんて、割り切っていると軽く言いながらもそんな関係を続けている友達がいないわけではないけれど、男だって女だって、心から満ち足りているようには見えない。
ある程度年齢を重ねて恋愛の喜びを知ってしまえば、体だけの関係がどれだけ不毛なものかがわかるだけに、その切なさを味わうことになる。
恋愛の本当の幸せを知らない若いうちなら、割り切れるのかもしれないとは思うけれど、それでもやっぱり、まっとうではないと思う。
気持ちを添わせてこその恋愛だから。
私のそんな感情が表情に露わに浮かんだんだろう、竜也はよしよし、と私の頭を撫でて。
「俺も、奈々と同じ。体だけなんて、論外だから安心しろ」
「……うん」
「でも、義兄さんは、ある意味特殊な環境にいたから。
まあ、かばうわけじゃないけど。
それでも、俺の両親と義兄さんの両親が大学時代からの友人で、無理矢理お互いの子供を結婚させるなんて、意表を突かれたけど。
今二人はかなり幸せだから、それも良かったって思う」
思い返すようにしみじみと話す竜也に、え?と私は驚いた。
両親同士が友達?