いきなり王子様
社長を務めているほどの人の結婚。
それもご両親が望む人との結婚だとすれば、会社同士の利害が絡んで、愛情は二の次、立場を強調した結婚が想像できるけれど、竜也のお姉さん夫婦は少し違うらしい。
大学時代のサークル仲間だった竜也のご両親と璃乃ちゃんのお父さんのご両親は、それぞれ年が近い子供同士を結婚させたくてたまらなかったらしく、ほとんど無理矢理に近い形で二人を結婚させたらしい。
社長としての将来が決められていた璃乃ちゃんのお父さんである駿二さんと竜也のお姉さん絵璃さん。
どういった心境で結婚に踏み切ったのかはわからないけれど、特に抵抗するわけでもなく、その先に確実に結婚が控えているお見合いに抵抗を見せずに受け入れ結婚したらしい。
会社の後継者と、通訳として忙しく働いていた絵璃さんの結婚は、その後奇跡的にもうまくいき、今では、
『離れると寂しすぎる』
と絵璃さんが呟くほどに愛し合う夫婦。
「うまくいって、良かったね」
「ああ。何ばかな計画を子供たちに押し付けるんだよと俺の方がいらっときたけど、両親たちは『うまくいくって思ってた』と普通に話すし」
呆れたように、それでも、お姉さんの幸せに安堵の吐息を漏らしている竜也は、どう見ても『弟』の顔。
よっぽどお姉さんの事が気になっていたに違いない。
「ご両親たちには、絶対にうまくいく何かが感じられたのかもね。
うちの両親だって、兄貴たちが、『結婚したい』って彼女を紹介しにうちに連れてきた時点で『いいんじゃない?』ってあっさりとOKしてたし」
私とは年の離れた兄貴たち。
それぞれの恋人を連れて家に来た時も、落ち着いて笑顔を浮かべていた両親に対して、まだまだ子供だった私の方が拗ねて兄貴たちを困らせた。
私を溺愛していた兄貴たちが、私以外の女の人を大切にする事が信じられなくて妬いてしまったんだ。
今となっては笑い話だけど。