いきなり王子様
「永久歯欠損っていうらしいんだけどね、私のかかりつけの歯医者さんは
『乳歯がだめになるまで大切に使いなさい。虫歯になったり、抜けたらその時考えよう。どうとでもなるよ』って大した事じゃないように言ってくれるから、私は大して悩んでないの」
どこか訳がわからないように眉を寄せている竜也に、軽く言った。
永久歯がはえてこないと聞かされて、竜也も璃乃ちゃんも驚いているに違いない。
確かに、私もそのことを初めて聞かされた時には驚いて『どうしよう』と戸惑ったけれど、今となっては特に困ることもなく、日常生活にはなんの支障もない。
ネットで検索してみても、私のように『永久歯欠損』だと言う人の数はとても多くて、そのコメントを読むたびに、それほど悩まなくてもいいのかな、と感じている。
けれど、私は欠損している永久歯は一本だけだから、落ち着いて考えられるのかもしれない。
複数本を欠損している人にとっては、大きな悩みとなっていることもネットからはわかるし、他人事ではないその悩みが苦しくもある。
乳歯の下に育っているはずの永久歯の存在がレントゲンで確認できなかった時、それは私が幼稚園の時だったけれど、母さんがとても苦しげな顔をしたことを覚えている。
歯の定期健診の時、歯科助手のお姉さんに
『稀に、永久歯欠損の子供がいるので、レントゲンで確認してもいいですか?』
と言われて、軽く受けたレントゲン。
そして発覚したのは永久歯欠損。
そして、生えてこない一本の永久歯が、私を愛してやまない母さんを変えてしまった。