いきなり王子様
荒々しくそう言った後、ふっと我に返る。
いけないいけないと、自分を落ち着かせるようにすっと息を吐いた。
一旦勢いがついてしまった感情によってこぼれる言葉は、自分の思いとは別のところからとめどなく飛び出してしまう。
そんなこの状況に自分でもだめだなと思いながらも
「はいはい、すみませんねえ。どうせ私はがっかりさせるしかできない、見た目だけのお姫様なんです。ほんと、申し訳ありませんね」
さらに自分で自分の首を絞めるかのようなきつい言葉を吐いてしまった。
おまけに、言った後で『ふんっ』と顎を突き出すなんてことまでやってしまって。
うわっ。
ど、どうしよう……。
不安定な感情が次々と溢れ出てきてあたふたする。
きっと、私の表情にはそんな内情を露わにする素直な気持ちが表れているんだろうけれど、甲野くんは私の言葉に反応するでもなく、ただ私をじっと見つめるだけ。
私が甲野くんを傷つけようなんてこと、決して思ってないってわかってくれてるかも、と感じるのは自分に都合が良すぎる思い込みかな。
「甲野、くん?」
身長差ゆえに、上目づかいになる私の視線を甲野くんに向けて、ははっと笑い声をあげると、ようやく彼の口が開いた。
「かなりいい性格してるな。見た目の良さは、お前にとっては単なるオプションだってわかったからには、やっぱり欲しくなる」
特に照れるでもなく、軽い口調で私の見た目を誉めてくれるけれど、逆に私から見れば。
「甲野くんだって、そのオプションは十分備わってるじゃない。
性格がどうなのかはなんとも言えないけど」
同期の出世頭と言われるほどの能力と、ちゃんと結果を残す彼の評判の高さは、見た目の良さというオプションなんて必要ないほどに確固たる地位を築いている。
……腹立たしいほどに。