いきなり王子様
「カーテンを選んだのも奈々?」
リビングとベランダを仕切る窓に吊るされているカーテンは、紫とピンクが交じり合ったような、少し大人びた色合い。
この部屋に引っ越した時に、いくつかのお店でカーテンを物色したけれど、しっくりとくるものがなくて。
「生地を買って、自分で縫って作ったの。これっていう既製品に出会えなかったから、やむなく作ったんだけど、結構気に入ってる」
「へえ、上手に作ってるんだな。手作りだからこの部屋にしっくりおさまってるし、奈々の好みがわかって、いいな」
「……少女趣味って笑わない?」
いい大人が、ピンクに満ちた部屋で暮らしてるなんて、ひかれてしまうかもって、不安もありつつ竜也をこの部屋に招いたから。
竜也の反応が、どうも気になってしまう。
「少女趣味、いいんじゃねえの?」
「ほんと?」
「ああ。奈々の好みだけで揃えられている部屋ってわかって、ちょっとほっとした」
「……ほっとした?」
竜也は目を細めて、私の体を更に抱き寄せた
「男がこの部屋にいたっていう痕跡がない。この部屋のどこにも男が好みそうな色合いの物が置かれていないから、ほっとした」
とくとくと跳ねる私の鼓動を、更に大きく跳ねさせるような熱い声で。
「……で?実際はどうなんだ?」
「実際って?」
「この部屋に男が来た事はあるわけ?」