いきなり王子様
探るような声に、思わず首を傾げた。
竜也の口から出た言葉だとは思えない。
部屋の中に響く、テレビからの笑い声。
売れっ子のお笑いコンビのネタが始まったらしい。
竜也の言葉とは相いれない軽やかなその掛け合いを耳にしながら、ほんの少し気持ちは軽くなる。
よく見ると、普段よりも落ち着かない竜也のまばたきと、きゅっと結ばれた口元。
それが意味することを察してしまうと、お姫様とは真逆の私の性格が顔を出して。
「……さあ、どうだろ。気になるのなら、教えてもいいけど、どうしよう」
「はぁっ?」
もったいぶった私の口ぶりに、露わな不快感を見せる竜也。
「竜也だって、美散さんとの関係をちゃんと説明してくれないんだから」
小さく息を吐いて、ふふんと笑った。
「私も焦らしたいかも」
私のちょっとした意地悪に目を見開いた竜也。
この二日間、振り回されるだけ振り回されたから、これくらいいいよね、と言い訳しながら、それでもやっぱり目の前のオトコが愛しくて。
くすくすと笑い声を上げながら、勢いよく、その胸に抱きついた。
この部屋に招いた男性は、父さんと兄さんたちだけだって、小さく呟きながら。