いきなり王子様

探るような声に、思わず首を傾げた。

竜也の口から出た言葉だとは思えない。

部屋の中に響く、テレビからの笑い声。

売れっ子のお笑いコンビのネタが始まったらしい。

竜也の言葉とは相いれない軽やかなその掛け合いを耳にしながら、ほんの少し気持ちは軽くなる。

よく見ると、普段よりも落ち着かない竜也のまばたきと、きゅっと結ばれた口元。

それが意味することを察してしまうと、お姫様とは真逆の私の性格が顔を出して。

「……さあ、どうだろ。気になるのなら、教えてもいいけど、どうしよう」

「はぁっ?」

もったいぶった私の口ぶりに、露わな不快感を見せる竜也。

「竜也だって、美散さんとの関係をちゃんと説明してくれないんだから」

小さく息を吐いて、ふふんと笑った。

「私も焦らしたいかも」

私のちょっとした意地悪に目を見開いた竜也。

この二日間、振り回されるだけ振り回されたから、これくらいいいよね、と言い訳しながら、それでもやっぱり目の前のオトコが愛しくて。

くすくすと笑い声を上げながら、勢いよく、その胸に抱きついた。

この部屋に招いた男性は、父さんと兄さんたちだけだって、小さく呟きながら。


< 165 / 228 >

この作品をシェア

pagetop