いきなり王子様
今俺の胸に飛び込んできた愛しい女に、何のオトコの影もなく、長い夜に何が待っているのかもわかっているはずなのにこうして俺を部屋に呼んで。
昨日今日と、押し付けるような俺の想いに右往左往していたにも関わらず、こうして飛び込んでくれた彼女を、さらに強い愛しさで抱きしめてしまう。
「じゃ、明日は、俺が好きな黒の雑貨でも買って、この部屋に置いて帰るわ」
奈々の部屋には男が出入りしているという、ある意味マーキングに近い衝動。
「黒?」
わけがわからないとでもいうように顔を上げた奈々の唇に、かすめるようにキスを落として。
「どう見ても男物だろうっていうもんを、この部屋に転がしておけば、男よけになるからな」
「・・・・・・っ」
「まあ、この部屋でそれを見る男がいないってのが前提だぞ」
そうだ。俺以外の男がこの部屋に来るなんてことを考えるだけでむかつく。
奈々の全てを知って、大切にするのは、俺一人で十分だ。
「煙草はすわないけど、灰皿でも置いて、牽制しておくか」
ふと呟いた言葉に、自分で納得しながら頷いていると、
「……大丈夫なのに。竜也以外に、男の人、この部屋には入れないよ」
照れくさそうな上目使い。
本当、やめてくれ。
煽るようなその仕草に乗せられた俺は、そのまま奈々をソファに押し倒すと、首筋に唇を這わせ、その滑らかな肌にため息をついた。
「あ、ちょっと、竜也……」
「ちょっと黙れ。誘ったのは奈々だからな」
「誘ってないし……んっ。や、やだ……ここじゃ、無理……」
焦る奈々の声なんかお構いなしに、彼女のブラウスのボタンを一つ一つ外していく。
真っ赤になったその顔をじっと見ながら、手は休まずにゆっくりと。
もしも本気で逃げたかったのなら、逃げてもいいと、視線で教えながらゆっくりと。