いきなり王子様
「……あ」
思わず両手を口元に当てて、言葉を失う。
下腹部だけではない、体中のあらゆる場所が痛い。
普段使いそうにない筋肉も存在を示すように熱を持ったまま。
手首を見ると、ぐっと掴まれた時についたに違いない青い痣がくっきりと。
そして、シャツの首元をぐっと広げて覗くと。
「うわっ」
胸元に広がるたくさんの花・花・花。
「これって、キスマーク……」
呆然とそれを見ながら、夕べ抱かれた記憶を呼び起こしていた。
竜也からの激しい愛情に責められて喘がされ、逃げる術すら奪われて。
一晩中抱き続けられた私の体は、まだ熱を帯びているようでどうしようもない。
ベッドから起き上がるだけで精一杯で、きっとベッドから降りた途端にくずおれそうなほど腰に力が入らない。
「竜也……」
同じベッドにいるはずなのに、既にそこにはいない彼に気づき、切ない声をあげた。
初めての夜を過ごしたのに、目が覚めれば一人ぼっちなんて、冗談にもならない。
あれほど好きだって言ったのに、どうして?
「ようやく起きたか?」
一人落ち込んでいる私にかけられた声。
はっと寝室のドアを見ると、入り口の壁にもたれて、とろけそうな視線を私に送っているオトコ。
竜也がいた。