いきなり王子様
竜也の顔を見た瞬間、夕べ私が見せた恥ずかしいあれやこれやを思い出してしまって。
シーツを再び手繰り寄せると、その中に体を潜らせた。
一人でいる事が寂しくて仕方がなかったくせに。
いざ竜也が姿を現した途端、恥ずかしさで体は熱くなる。
「あれ?お姫様は夜が明けると魔法が解けて、王子様との時間を忘れるわけ?」
シーツで体を隠しているけれど、ベッドの側に竜也が来たとわかる。
「俺一人が本気で喜んで、夕べ奈々が言ってくれた嬉しい言葉は全部嘘だった?」
「う、嘘じゃないけど……」
「好きよ、って何度も言ってくれたのに、それってあの時の雰囲気に流されただけ?」
「ちがう……」
「あれだけ俺が愛してあげたのに、どうしてちゃんと顔を合わせてくれない?
もう忘れたい?それとも最初から俺のこと、からかってた?」
「そんなこと、ないけど……」
竜也の言葉に、気弱な響きが感じられ、思わずシーツから顔を出してしまいそうになるけれど、あまりにも夕べの私の乱れっぷりが記憶に強くて。
どうも踏ん切りがつかない。
「俺を、好きじゃないのか?俺、このまま帰った方がいいか?」
「やだ、帰らないでっ」
次第に小さくなっていく竜也の声を聞いて、焦った私は、思わずシーツをはねのけて起き上がった。
……あれ?
勢いよく顔を出した私の目の前には、ベッドの端に腰かけて、にやりと笑っている竜也の顔。
「……帰るかよ」
あっさりとそう呟いて、私の唇にキスを落とした。
「ん?俺がいなくて寂しかったか?」
私の頬を撫でる竜也の手の甲の温かさに、悔しいけれどほっとした。