いきなり王子様
どうしようもなく恥ずかしい私と、そうでもない、余裕の竜也。
二人で朝食をとったあと、竜也が着替えを買いに行きたいと言いだして、出かける準備をしていた。
昨日の朝会った時には、まさか私の部屋に泊まる展開を迎えるなんて思ってもいなかった。
夕べ、下着だけはコンビニで買った竜也は
「洗濯した俺の衣類、この部屋に置いておくから。下着もどっかにしまっておいて」
またそのうち、私の部屋に泊まりに来ると暗に匂わせた。
そのことがやけに嬉しいと、口角も思わず上がる私って、どこまで恋愛に慣れてないんだと、再び実感。
そんな私に反して
「来週は、俺の部屋に来るか?まあ、周りには大したデートスポットなんてないけど、俺がいればいいだろ?」
……余裕過ぎるでしょ。
車を停めていたパーキングから車を出して、向かったのは近所のショッピングモール。
買いたいもの全般揃えられるし、食事をするにも問題ない。
私もお気に入りの場所だけど、車がなければなかなか来る機会がないせいか、私も久しぶりだ。
一般道をのんびりと走りながら、そんな事を考えていると、ふといい考えが浮かぶ。
「私、車買おうかな。学生時代に免許だけはとってるし、練習すればちゃんと運転できるはず。そうすれば竜也の部屋に行くのもラクだし」
電車だと3時間かかる片道も、車だと1時間半ほど。
「週末、仕事で遅くなっても行けるし、それって、いい考え」
弾む声で呟きながら運転席の竜也を見ると。
「却下」
「へ?」
「奈々が無事に着くまで気になって何も手につかなくなるって簡単に予想できる。
今までペーパーで、運転する機会がなかったんなら、その免許証は高価な身分証明書だと割り切ってろ」
ちらりと私を見た後、この話題は終了だとでもいうように、表情を硬くした。
なんだか二人の間に見えない壁を感じた。