いきなり王子様
* * *
骨抜きにされるというのは、こういう事なのか、とぼんやりと考えている。
私の体に変化があったわけではないけれど、感情だけを考えれば、以前の私とはかなり違う。
強気で意地っ張り。おまけに短気。
それはきっと変わらないけれど、たった一つ。
甲野くん……ううん、再び竜也と呼ぶよう強く言い渡されたっけ……への思いが強くなりすぎて、他の事がどうでもよくなってしまった。
というより、体に残る竜也の熱をどう発散させればいいんだろう。
車の中で感じた心地良さを思い出せば、今すぐにでもまた竜也の腕に閉じ込められたい。
そっと唇に手を当てれば、あまりにも強い触れ合いのせいでほんの少し腫れているようにも思えるけど、それもまた心を温めてくれるし。
目の前にあった竜也の瞳の色を思い出すだけで鼓動はとくり。
「だめだ。長い間恋愛から離れてたから、刺激に耐えられない」
手元にあったクッションを抱えて、ソファに体を倒した。
「はあ、どうしたらいいんだろう」
ソファに仰向けに寝転がって、胸元にクッションを抱えたままため息を吐くと、今更ながら恥ずかしさがこみあげてくる。
「ぎゃー」
全然女の子らしくない叫び声をあげて、体に溢れる照れくささをどうにかしようとするけれど、それくらいじゃさっきまで竜也のキスに応えてしがみついていた自分を抹消するなんてできない。
『俺と、ちゃんと恋愛してくれ』
そう竜也に言われて、それを受け入れたっけ……。
「うー」
竜也に骨抜きにされた私は、その夜ずっと誰もいない自分の部屋で、奇声を上げ続けていた。