いきなり王子様

「わ、私はそんなに素直じゃないし、純粋でもない」

相変わらず近くにある竜也の顔がいたずらっぽく笑っていて、どきどきする気持ちを収められないままに、呟いた。

「それに、私の勝気で短気な性格、同期のみんな知ってるし……」

「そうだな。表に出してる奈々の性格は勝気で短気で男顔負けの頑固者。
特に本社にいる同期はみんなそう思ってるだろうな」

「それがわかってるなら、どうして灰色なんて曖昧な」

「みんなが思っていても、俺はそうは思ってない。
奈々が見た目を裏切る女だってのは、かなり前から知ってたからな」

「え?前から?」

「そう。かなり前って言っても、入社後の研修の時だけどな」

思い返すように呟く竜也は、どこか自慢げに私を見遣ると

「見た目は飾っておきたいお姫様だけど、中身を知れば、いつでも隣で甘やかせておきたいかわいいオンナだ」

「な……そんな……かわいいなんて、お、おかしいよ、た、たつや」

甘ったるい竜也の言葉に敏感に反応した私は、上擦った声で反論するけれど、そんな言葉に説得力もなく、『はいはい』と私の頭を撫でながら、笑う竜也はあっさりと流した。

「ちょ、私の話も、ちゃんと聞いてよ」

運転席に体を戻し、シートベルトを再び着けた竜也の腕を掴むと、竜也は私の手の上に、反対側の手を乗せて。

「聞いてるし、ずっと聞いてたんだ。あの日、奈々が話してた言葉、聞いてた」

「え……?あの日……?って、一体、いつの日の事……?」




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