いきなり王子様


竜也の意味深な言葉の意味がわからなくて、というよりも、今朝会ってからずっと竜也の様子や言葉に振り回されているとしか思えなくて、何を聞いて何に納得すればいいのかもよくわからない。

「本当、昨日からずっと竜也に遊ばれてる感じがする……」

小さく息を吐いて、助手席に体を預けた。

遊ばれてるとは本気で思ってるわけではないけれど、竜也って本当、わかりづらい。

私と恋愛、それも遠距離恋愛をしようなんて突然言い出した真意すらちゃんと聞いてなかったな、と思いつつ。

それでも一気に竜也に惹かれた自分も、やっぱり普通の女なんだなあとも思う。

見た目に揺れたのかもしれないし、竜也の強引な言葉に気持ちを掴まれたのかもしれない。

仕事への姿勢や、周囲からの評価、それはきっと女の子たちがぐらりと気持ちを持っていかれるには十分すぎるほどご立派なもので、私もその点は尊敬してる。

実際の竜也は、仕事に対してはストイックに事を進めるけれど、私生活は強引で甘くて狙ったものは絶対に手に入れる。

そんな事、昨日一緒にいただけでよくわかったし、きっと、私が竜也に惹かれたのもそこだと思う。

私のどこを気に入ってくれたのかわからないけれど、一旦気に入ったものは手放したくない子供のような我儘と身勝手さ。

それが彼の魅力であり、私が彼を拒めない大きな理由。

「遊んでる、と言えばそうかもな。好きな女を振り回して遊びたいってのは男の願望だろ?」

静かに車を動かし始めながら、再びイメージを覆す言葉。

そんな言葉に、私はやられているのかもしれない。

竜也が私にくれる甘苦しい言葉に、どんどん浸食されていく。

「まあ、俺が今話した言葉の意味は、これから行く場所でほとんど解決できると思うから、混乱しながら俺の事ばかり考えてろ」




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