いきなり王子様

「え?何のこと?顔を合わせるなんて、何度も言われなくてもわかるって」

私が首を傾げると、くくっと喉を震わせて。

「もう少し焦らしてもいいんだけどな。ま、いっか。
俺が女と一緒にモーニングを食べるのは、たまたま店で顔を合わせた時。
顔見知りなのに別のテーブルに着くのも妙だからな。
まあ、それが複数の時も多いし」

「……」

「俺が健全な、いいオトナの男だっていう事は間違いないけど、どちらかと言えば、朝はゆっくりと恋人とベッドで過ごして、自分の部屋でコーヒー」

「恋人とベッド……自分の部屋で……」

思いがけなく刺激的な話をされて、一瞬目を見開いた。

竜也の何か意味ありげな口元をじっと見ながら、聞いた言葉を繰り返すだけ。

「奈々は?恋人との朝はゆったりまったり?それとも早起きして朝食作るタイプ?」

そっと顔を近づけて、吐息まで届きそうな距離で、聞かれても。

「さ、さあ……。休日かどうかにもよるし……相手にもよるし……」

わたわたと焦って、熱くなった体をどうしようかと、思わずグラスに入ったお水を飲んだりして。

意味なく視線を周囲に向けてみたり。

私だって健全ないいオトナの女なんだけど、こんな話題には慣れていなくて困る。

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