いきなり王子様
「ん?相変わらずそう呼ばれてるって司が言ってたけど。
真珠が『女王』で奈々は『姫』。
そのツートップは今でも評判の美人だって自慢げに言ってたぞ」
「ツートップって……」
「まあ、確かに二人とも美人だし、そう言われても納得だな」
手元の資料に軽く目を通しながら、甲野くんは呟いている。
『美人』って言葉を本人を目の前にして、あまりにもさらっと口にするのには驚いたけれど、不思議と私はそれを簡単に受け入れる事ができた。
「あ、どうも、ありがとう」
普段なら同じ言葉を言われても、どこか居心地が悪く抵抗を感じて不機嫌にもなるけれど、今は素直にそう返す事ができて、不思議な気持ちになる。
「美人なんて、今までも言われ慣れてるだろうけど」
「まあ、確かに」
「へえ、自覚してるんだ、やっぱり」
思わず呟いた私の言葉に、甲野くんは意地悪い声でにやり。
甲野くんの表情に、嫌悪感は感じられない私は、そんな自分が新鮮に思え、おまけにいつもなら絶対に見せない笑顔すら作る事ができた。
ふふっ。
斜め下から甲野くんを見る視線に、ほんの少し甘い感情を含ませて。