いきなり王子様
あまりにもあっさりと私の言葉に答えた竜也。
見上げると、どう見ても気分を害しているような、不機嫌な顔がそこにあった。
「俺のオンナに手を出そうとするなんて、100万年早いって言っておく」
「は?」
「あいつ、きっと奈々が好きなんだよ。昔からいただろ?
好きな女の子にいたずらしたり、意地悪な事を言っては泣かせるような男の子」
私の肩を抱き寄せながら、大きなため息を吐いた竜也は
「昔から、そんな経験たくさんあったんじゃないのか?
奈々みたいに見た目がお姫様みたいに可愛い女の子は、素直じゃないガキのターゲットにされやすいからな」
「ターゲットって言われても。まあ、小さな頃からよくいじめられてた。
でも、それは男の子だけじゃなくて、女の子からもだったから……」
だから、男の子がどうのっていう意味では気にしたことなかった。
誰からもいじめられていたわけではなかったけれど、私のする事全てが気に入らない女の子たちからの意地悪には、結構堪える事が多かった。
「いじめられてたのか?」
低い声の竜也は、私の顔を覗き込んだ。
「よくあるいじめっていうわけではなかったんだけど、私の事が生理的に嫌いなのかなっていうほど、私を目の敵にする女の子はいた」
思い出すと一気に暗い気持ちになるし、普段作っている強気な表情も作れなくなる。
小学生の頃から、私の見た目が気に入らないのか、
『自分は可愛いって思いこんでるブス』
『かわいい服を着ていれば、誰でもあの子以上にかわいく見えるよ』
『お姫様って言われてきどってる』
私を傷つける言葉は、毎日のように私にふりかかってきた。