いきなり王子様


「女王様か……真珠も、そう呼ばれて複雑そうな顔をしながら笑ってるな。
あいつも、その見た目と性格の違いに苦労しながら生きてる感じだからな」

「……根が真面目な女王様。一途だから、司を忘れられないし」

「忘れる必要もないけどな」

「でも、司は彼女がいるし……って、こないだもその話をしてたね」

竜也の腕の中で、思わず笑った。

「そうだな。まあ、司も真珠も、時期がきて、素直になれば、ちゃんと幸せになれるさ。
まあ、その前に俺たちの方が幸せになりたいけどな」

くすくす笑う竜也の声が、彼の胸から伝わる。

抱きしめられたまま、彼の胸に耳を当てていると、鼓動と共に、声でさえダイレクトに私に響いてくる。

それは、竜也をとても近くに感じる事ができて、過去の思い出に沈みそうになった私の心も浮上させてくれるようだ。

そっと目を閉じて、その心地よさを堪能してしまう。

「俺たちが幸せになる為に、笹原には、『俺の奈々に手を出すな。諦めろ』とくぎを刺しておくから。いいな?」

「え、あ、そうだ、笹原」

忘れていたけれど、笹原の名前が出たのがきっかけで、こんな状況になったんだったっけ。

えっと、笹原が私をいじめるというか、からかうというか。

先輩である私を先輩として接していない、あの生意気な男。

「あいつは、奈々を気に入ってるんだと思う。まだ学生気分も残ってるんだろうな、いじめっ子気質もあるんだろうけど、奈々をからかって気を引いてるんだ」

私を抱きしめる竜也の力が強くなったような。

そっとその顔を見上げると、明らかに不機嫌そうな顔。


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