いきなり王子様
深い吐息と共に、体中がそわそわしそうな、そんな言葉を落とされて、私はどう答えればいいのか全くわからない。
その言葉の甘さに気づいて顔は一気に熱くなるし足元の力は抜けてしまうし、
「た、竜也、も、もういいから……私、そんなの慣れてないから」
焦った声で、照れた気持ちを隠せずにいた。
あまりにも恥ずかしくて、思わず俯くと、
「俺の言葉を否定しないだけでも、今はいいか」
くすっと笑った竜也の声が聞こえた。
「奈々がお姫様って言われて居心地悪そうにしているのにも気付いていたし、敢えてそのイメージとは違う自分を見せようと強気な言葉で自分を守ろうとしているのもわかってた」
「え……」
「入社してすぐの研修で、奈々は、お姫様って呼ばれる度に不安そうな顔をしていたからな、嫌っていうよりも、恐怖を感じてるんだなってわかったんだ」
「あ……そんなこと、」
ない、と言おうとした私の言葉を遮るように、竜也は言葉をつなぐ。
私の心を気遣いながらの、優しい声で。
「お姫様みたいな見た目で、嫌な思いばかりをしてきたんだろうって、わかって、それから奈々が気になりだしたんだ」
「そんなの、どうして……?」
どうしてわかったんだろう?
私が見た目の可愛らしさで子供の頃から妬まれたり意地悪な言葉で傷つけられては頑なに自分を守ろうと必死だったこと、竜也にどうして。
それも、出会って間もない新人研修の頃に。
戸惑う気持ちのまま、視線を上げると、そのままゆっくりと抱きしめられた。
私がいつでもそこから逃げてもいいような、ふんわりとした抱きしめ方は、逆に彼の想いの強さが、感じられて。
不思議と落ち着いてくる。