いきなり王子様
驚く私に、小さく笑った竜也は
「ほんと、俺の事に興味なかったんだな。
ちょっとむかつくけど、まあ、いっか。
姉貴の友達がモデルやってて、スカウトみたいなのされて、していたんだ。
だけど、大学を卒業できる学費分を稼いで、やめたけどな」
「へえ……知らなかった」
ぽつりと、それだけ呟く私に、竜也は
「だから、見た目が綺麗な女は見飽きるほど見てたし、女の表情の変化とか、結構敏感に察するようになったんだよ」
「そう……」
「だから、奈々が『お姫様』って言われても、心底喜んでないのもわかったし、わざと女らしくない言葉をつかって見た目のイメージを覆そうとしてるのも気付いた。
自分の外見のイメージを取り払おうと必死だったよな」
そっと首を傾げながら、私を優しく見つめると、竜也はほんの少しの不安げな声で
「見た目が原因で人に嫌われたりすることが怖いんだろ?
だから、敢えてさばさばとした、女としての色を振りかざさないように意識して、そうして生きてるんだろうなって、見ていて痛かったな。
あの頃から、俺は奈々が気になってたんだ」
あの頃って入社して間もない頃だ。
そんな前からずっと、気にしていたって言われても、私は竜也とは勤務地も違うし、個人的に関わる事なんてなかったから、特に彼の事を意識したこともなかた。
「私は……竜也を全然……」
申し訳ないなという気持ちも含めて、小さく呟いた。
そんな私に苦笑しながら、竜也はくすっと笑うと。
「俺の事、全然気にしてなかっただろ?俺がモデルしていたって事、本社でも結構知られてるのに、それすら知らなかったんだもんな。
よっぽど、俺って印象薄かったか?」